Eternal Memories(追憶) -1-
神さま…神さま……神さま……
………………どうしてですか?
祈っても祈っても…
届かない…
…あなたの声が聞こえない…
私の願いは届かない…
とどか…ない…
ならばもう……祈らない…
「月ちゃん、交換しよう!」
「うん、しよしよ♪」
バレンタイン…高校に入ってからこれで二回目だけど、もう慣れたもの。
お昼休みに、女の子同士、みんなで作ってきたお菓子を交換し合う。
平和だな、と思う。
仲のいい友達に囲まれて、悩みもなく、毎日はとても穏やかで、…幸せだ。
でも、少し…何か物足りない…。何がって聞かれても困るんだけど…。
何かが、欲しい…自分を熱くする何か、動かす何か、変わるきっかけ…。
欲張りなのかな?私…。うん、欲張りだね。だって毎日はこんなに平穏だもん。
「…ちゃん、月ちゃん!」
「え?何?」
「もう!何ぼーっとしてるの? 私の作ったチーズケーキ、どう?」
「ああ、ごめんごめん。美味しいよ!」
呼ばれてるのに気付かなかった…。
でもそれだけ考え事に没頭してたのにも関わらず、
チーズケーキを食べる口は動いたままってどうなの?私…。
…ま、いっか。今は目の前にいっぱい並んでるお菓子を食べることの方が大事だね♪
「月子、バレンタインに大福なんてまた渋いもの作ってきたね〜、わたしにも頂戴♪」
「もちろん!交換交換♪あっ、さっこのケーキも貰いに行かなきゃ!
今日はぶたるの覚悟でみんなのお菓子を堪能するぞ!!」
私は急いで隣のクラスに向かおうとした…けど…
「どこ行く気だ?…もうチャイム鳴るぞ、澤木。」
「わっ!先生!」
その行動は先生に阻まれてしまった。
食べきれなかったみんなの手作りのお菓子をかばんに入れて、
家へと自転車を走らせる。
帰ったら先ずさっこのケーキを食べて…あっ、クッキーもまだ残ってるし…
う〜ん、こりゃほんとに太るかも…。
そんなことを考えながら、坂道を下っていた。
かわり映えのしない道…そうだ!たまにはちょっと遠回りして寄り道でもしよっと♪
バレンタインだし、いつもと違ったことしてみるのもいいよね。
ふと思いついて、わき道へそれた。
初めて通る道…だけど、方向感覚は優れてる方なので迷わない…はず。
そのまま知らない道をどんどん勘だけで進んでいった。
「明らかに、行き過ぎてるよね…バックしなきゃだめかも…。」
10分くらい彷徨って、そろそろ自分の家の方向へ自転車を走らせてみようとした時、
おしゃれな立て看板が目に入った。
10mくらい先に見える美容院のものらしい。
ちょっと興味をそそられて、
自転車から降りてその美容院の前をゆっくり歩きながら通過した。
失礼にも、中を覗きながら…。
うわ、おっ洒落〜!!! いつか、こんなとこで髪切ってみたいな〜。
そこは、かなりハイセンスな内装で、…なんだかちょっと高そうだった。
お客さんも、てるてる坊主みたいな姿でもなんかお洒落っぽいのがわかるし、
バイトもしてない高校生には手の届かない高嶺の美容院(?)って感じ。
でも素敵だなー…。
「入らないのか?」
「―――!」
いきなり目の前から声がした。
その美容院に思考も目も釘付けだった私は心臓が止まるほど驚いた。
大きな音をならす心臓を抱えたまま、私は前を見る。
「入らないのか?」
「いえ…。――!……………。」
そこには、24,5歳くらいの背の高い男の人が立っていた。
少し濃い色のこげ茶のズボン。上に着てるのはベージュのニット。
靴は少し光沢のあるお洒落な革靴。
そんな着こなしをしていたその人の顔を見て、私は言葉を失った。
――――――綺麗な顔立ち。
「入れば?」
「え…い、いや…見ていただけなんで…」
まだばくばくと音を鳴らしつづけている心臓のせいか、声が震える。
うわ、はずかし〜…じろじろみてたの見られた〜…。
恥ずかしくて顔が熱くなる、おそらく赤くなってるだろう。
「…なら中に入って見れば?」
「えぇ!?いや、別に…」
はい!?何を言い出すんですか!?…もしかしてこの美容院のスタッフの人だったり…?ていうより、そんな常連でもない人に急に見に入ってこられても皆さん困るのでは?って、何私入ることを前提にした心配をしてんの?いや、確かに中にはちょっと入ってみたい…みたいけども、そんなちょっとおかしな行動とることにはかなり抵抗が…。はっ、もしかしてこれが世に言う悪徳商法?…って単に好意でいってくれてるんだったら失礼にも程がある考えじゃん…。この人悪い人じゃなさそうだし―――――――
「そんな遠慮しなくても、見学くらい大したことじゃないよ。」
「え?いいいいや、でも…」
「……はい、どーぞ♪」
考えがまとまらず頭のなかがぐるぐるになっていた私をよそに、
その人は美容院の扉を開けて、中に入るよう促した。
ここまでされたら逃げるわけにもいかないし…入るしかない…。
あまりに急激な展開にばくばくしてた心臓がもうさらに大きな音を奏でている。
「お、おじゃまします…」
うわ、何言ってんの私!そんな人様の家にあがる時の挨拶なんかしちゃって…!!
「ちわっす、海流(かいる)さん。誰ですか?その子。」
美容師さんの一人、背のこれまた高い男の人が、ドアを開けた人に声をかけた。
「よぉ、智。ん?この子は見学者♪
よ、悠馬!この子店を見たいんだってさ。
しばらく中で店見せてやっててもいいよな?店長」
海流さんと呼ばれた強引な人が、
店長(というにはちょっと若過ぎるような…)らしき人に声をかけた。
「おぅ、海流。別にいいぞ。
君、見学するならそっちの椅子に座ってごゆっくりどーぞ。」
満面の笑みと共に店長さん(らしき人)がそう言った。
「こっちこっち。どうぞ、お嬢さん」
「あ、ハイ…」
またもや海流さん(とやら)に促され、私はとまどいながら椅子についた。
店に入ってからすでに五分。
店内をきょろきょろする私は多分、はたから見たら、
まるで田舎から都会にきたおのぼりさんのようだろう。
中に入ると外からみた感じよりさらにお洒落なこの美容院…
高校の制服着てる私がこの店にいるの、かなり浮いてると思う。
今、中にいる人間は8人。
二人のお客さんに、
店長さんと、海流さん(とやら)と、智って人と、
ちょっと古着系な男のスタッフさんと、
こんなに綺麗な人は初めて見た!ってくらいの超美人さん。
うわ、何かオーラ出てる気がする…モデルさんか何かかな…きれ〜!
超美人なお姉さんに見とれていると、
智って人と話してた海流さん(とやら)が近づいてきて、私のとなりの椅子に座った。
すごく端正で綺麗な顔は、近くで見ると迫力がある。
あの超美人さんと並ぶと、映画の1シーンかのように思えそうで、絵になる。
「じっくり見てる?どう思う?この店…」
「すっごくお洒落ですね!あの、あの人が店長さんなんですか?」
「そう、あいつが店長だよ。」
「すごく若い方ですよね。あの…貴方はここの美容師さんなんですか?」
「いや…。おれはあの店長のツレ。
ここには手伝いにきてるっていうか邪魔しにきてるっていうか…
いりびたってるっていうか…」
「…?じゃあ美容師さんじゃないんですか?」
「美容師に見える?残念ながらはずれ。俺は大学院生だよ。君は…高校生かな?」
「はい。」
「名前は?」
「澤木 月子です。」
「そっか、俺は三崎 海流。」
三崎さんは話がすごく上手くて、
初めて会ったっていうのに何の苦もなく会話が続いていく。
この人、むちゃくちゃ頭の回転が早い…。
初対面は苦手なはずの私だけど、
彼に上手にリードされて、まるでずっと知ってる人と話してるみたいだ。
趣味の話になった時、お互いに『映画がすごく好き』って共通点を見つけて、
それからは映画の話で盛り上がった。
最近見た映画の話に始まり、アクションではこの映画が好きだとか、
好きな俳優の話とか、つぎつぎ話題が出てくる。
そして…
「じゃあ、どの映画が一番好き?」
「私は『My Fair Lady』!」
『My Fair Lady』というのはオードリー・ヘプバーン主演のミュージカル映画で、
1964年のアカデミー作品賞受賞作だ。
話はいたってシンプル、下品な言葉遣いの花売り娘が貴族で言語学の教授と出会い、
どんどん気品あるレディに成長していくというもの。
『プリティ・ウーマン』の元となった作品でもある。
「え、まじ?俺も『My Fair Lady』は大好きだよ」
「本当?」
「ああ。イライザのあの成長振りは見てて気持ちいいよな。」
「うんうん♪
花売り娘が努力して、内面を磨いて本当の貴婦人になっていく…憧れるな。」
「俺はヒギンズ教授に憧れるけどな。
あんな風に人間を磨き上げていくのは絶対楽しいだろ♪」
「あはは、人間は進化する最高のおもちゃって?
いい性格してるね、三崎さん♪」
私がそういうと、三崎さんは何か考えるように手をあごの下に持っていった。
「?」
気悪くさせたかな…?
「………。―――――そうだ!」
心配する私をよそに、彼は少しの間黙って、思いついたように声をあげた。
「な、何?」
「澤木さん…君、イライザになってみないか?」
「…え?」
「“ I want to try to make a lady of you.”」
いきなり流暢な英語が三崎さんの口から飛び出した。店にいる人達がこっちを見る。
「…え〜っと…」
「返事は?」
「返事って言われても…」
何?何が起こってるの?なんて答えたらいいの?うぅぅ…。
頭がまたパニック状態になる。一日でこれだけパニックになったのは初めてかも…。
「何をバカ言ってんだ?」
店長が口を挟む。
「な〜にがバカだって?彼女はイライザに憧れてるって言ったろ?
それに俺はヒギンズのように一人の人間を磨き上げてみたい。
俺にとっても、彼女にとっても、最高の提案じゃないか♪
な?澤木さん。」
「おまえなぁ…そんな」
「はい。」
私は店長の言葉に差し挟むようにくすっと笑ってそう言った。
「こと言って……え?……澤木さん……?」
店長が驚いて私を見る。
「“OK”です。三崎さん」
三崎さんの、店長にいった言葉に何だか納得してしまった。
それに私は三崎さんの持つ柔らかですべらかな雰囲気にすっかり取り込まれていて、
それは、話してると心地よさまで感じるほどだった。
「決まりだな♪俺のことは”海流”でいいよ。」
「じゃあ、私も”月子”で構いません。」
「よしっ、よろしくな♪月子」
いきなりな展開に驚いてる美容師さんたちをしりめに、
海流さんは微笑んだ。
海流さんのその微笑みと、私の名前をよんだ声が、
何故か少し胸を熱くした。
これが私たちの物語の幕開け…
全ての始まりだった…
ねぇ…覚えてる?
私は鮮明に思い出すよ、16歳のバレンタイン…。
10年後も20年後も…忘れはしない…。
返事をしてよ…。
お願いだから…
もう一度、声を聞かせて…。
……かえってきて。
やっちゃいました、笑♪「Eternal Memories」 第一話です〜。
え〜…駄文で申し訳ないです…もっと精進するので許してください(><)
感想・心の底からまってますv(どきどきどき)
え〜…2話とくっつけちゃいました!!笑。先が長いので始めで節約みたいな…迷惑爆笑。
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