Eternal Memories(追憶) -14-
8月半ば、暑い暑い日が続いていた…。
勉強に本腰を入れ、受験に向けてひたすら勉強を続ける。
そんな中、店にも毎日のように通っていた…。
驚くことが二つ…
一つは、千春さんと智君が付き合い始めたということ…。
どうやら智君が告白したらしい…いつ、どうやってかは教えてくれないけど。
それから私は千春さんと少しづつ仲良くなってきて、
あれほどに拒絶されていたのが嘘のように、千春さんは目が合うと優しく微笑んでくれる。
もう一つは、真湖と店のみんなが仲良くなったこと…。
といっても実際に会ったというわけじゃないけど、
しょっちゅう悠馬さんや千春さんとメールなんかしたりしてる。
……なんか妬けちゃうな、両方に。
海流さんとはディスクを使って手紙のやり取りをしてる。
…と言っても私が返事を返して今は返事待ちの状態だけど…。
だけど海流さんが元気かどうかは把握できた。
毎週海流さんの声を聞ける日があったから…。
金曜の夜、店が終わって少し経った10時半ごろ…海流さんが店に電話をかけてくることになっていた。
電話をオンフック状態にしてみんなで話す。
それは電話代とか時刻の関係上(向こうは朝の4時半!)そんなに長い時間じゃなかったけど…
私には何よりも大切な時間だった。
だけど、私だって受験生。遊んでばっかりって訳にもいかない。
私は8月に入ってすぐ予備校の夏期講習に行き始め、
朝から予備校に行って勉強し、3時に店…
そこで1時間勉強してから仮眠をとらせてもらい、
そのあと店のお手伝い、
夜に帰宅してご飯を食べ、お風呂に入ってからまた勉強…
朝になったら予備校…という日々を過ごしてた。
私と海流さんの過ごす時間には7時間も差があった…。
それがすごく嫌だった。
普通に過ごしていたら同じ行動をとっている時間は皆無で、
姿が見えないとか、直に声が聞けないとか…そんなことが軽く思えた…。
あの文化祭の日々、何故あれしきのことで寂しいと思ったのだろう。
今では昼と夜すら………空すら共有できない…。
私はこの2週間ちょっと…過去の幸せを毎日嫌というほど感じていた。
…体が重い…。
海流さんが今の私を見たら、きっと「このバカ!」ってすごく怒るよね…。
……自分のしていることのバカさくらい、分かってるよ……。
………………それでも、止められないんだ………。
8月25日…朝っぱらからふざけた音楽が流れる。
「もしもし、真湖?」
『ちょっと、あんた今日暇?』
「え…何?」
『塾終わったらすぐうちの家おいで!』
「え…ちょ…」
「じゃっ待ってるから。」
――――――ピッ、プーッ…プーッ…―――
「………とりあえず予備校行かなきゃ…。」
いつも通りいきなり&強引な真湖からの呼び出し。
予備校から帰って、店に向かわずに真湖の家へ向かう。
まったくもう、有無を言わさないんだから…。
そんなことを考えながら真湖の家へ5分間自転車を走らせる。
―――ピンポーン―――
「いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
「こっち入って〜。」
真湖の部屋に通される…と、珍しく片付いていた。
「ん。」
入って座るとすぐになにやら青い封筒を手渡される。
「何、こ………。……………え………何で?」
何だろうと思った私だったけど、裏の名前を見てびっくり!
……差出人は悠馬さんだった。
「…もしかして文通してるの?」
「違うっちゅーねん! あほ!! うちも見たときびびってんから!」
「じゃ、何?」
「うん…あのさ…」
真湖が真剣な顔になる。
「…あんた…」
………?
「…海流さんの生活時間に合わせて生活してるらしいな?」
―――――!
「どうなん?」
「………。」
「……否定せんの?」
「…………。」
真湖がはぁと溜め息をつく。
「…ほんまに、何やってんのよ…。
悠馬さんの予想大当たりやん…。手紙よんでびっくりしたわ。」
手紙を渡される。読んでみると、そこには…
月子ちゃんがどんどん顔色悪くなってきていて、元気もなくなってきている…
もしかして夜寝てないんじゃないか、
アメリカの時刻に合わせて生活してるんじゃないか、
みんな心配してるから真湖ちゃんからやめるように言ってやってくれということが書いてあった。
……店のみんな全員の署名入りで……。
「多分悠馬さんがメールで送らんと手紙で送ってきたんは、
どれほどあんたのこと心配してるかを分かってもらう為やと思う。
じゃなかったらみんなの署名なんていらんし…。」
……悠馬さんは…だませない…か…。
鋭いのは知ってたけどこんなに見透かされてるとは思ってなかったな……。
「なぁ…何でそんなバカなことするんよ。」
「……。」
「もうやめてや、頼むから…。…何でなん?」
「………………ない…。」
「え?」
「…分からない…。………でも、そうしなきゃいれなかった…。」
何でって聞かれても上手く説明できない…。
海流さんと私には共有するものが何もなかった…。
年齢も、歩んできた社会も、見てる世界も…すべて違っていた。
それでも昼と夜、吸う空気、…見える空は共有できていた。
……だけど今は…空さえもう共有できない…。
だからせめて、彼が考えてる時は私も考えていたかった。
彼が動いている時は私も動いていたかった。
彼が起きている時に私が眠っているのは嫌だった…。
………過ごす時間の違いが嫌だった。
「…共有できるものが…欲しかったんだよ…。」
しぼりだすようにそう呟いた。
私のその言葉を聞いて、真湖は大きな溜め息をつく。
「バカやなぁ…ほんまに…。」
ぽんぽんと私の頭を撫でる。
「ほら、ちゃんと読んでみ? みんな心配してるやろ…?
…それに絶対…間違いなく海流さんもあんたのこといつも気にかけてる…。」
真湖は次々と心に響く言葉を紡いでいく。
「悠馬さんの言いたいこと…わかるやろ?
あんたと海流さんに…共有するものはあるやん。
…一番大事で、何より大きいもん共有してるやん。」
「………え?」
「お互いを、大切に思う心……共有してるやん…。」
『頑張れ。俺は、どんな時もお前の味方をしてやるから…。』
あ…
『…無理すんなよ。
…お前、どじだからな〜、頑張りすぎると大失敗するぞ♪』
…あ……
『 おまえは俺にとって…妹のようで、姉のようで、親友のようで………恋人のようで…
まだまだ未完成なのに、いや…未完成だからこそ、目を離せない存在…。』
……海流さん……。
『…うまく言えないな、どう言ったら伝わるのか分からないけど…』
その言葉の意味を…
その後ろに続く言葉を…私はちゃんと分かっていたのに…。
『笑顔を忘れるな』
………ちゃんと、聞こえていたのに…。
「無茶したら…あかんやん。
…あんたは、店のみんなに…友達に…うちに…
………あんたが想う海流さん自身にこんなに大切にされてんのに…
海流さんが大事にしてきたものを、あんたは自分の手で壊すんか?」
私はぶんぶんと首を振って否定した。
「……………真湖…っ…。…私…私…。」
「……うん…うん…。」
「……ごめんなさい…っ…。」
「……うん…。」
海流さんの言葉の意味…後ろに続く言葉…
『…うまく言えないな、どう言ったら伝わるのか分からないけど…』
――――――(お前を大切に思ってるよ…)――――
――――――――(だから……)――――――――
『笑顔を忘れるな』
ちゃんと分かっていたのに…伝わっていたのに…ちゃんと聞こえていたのに…
それなのに…理解(わか)ってなかった。
「…やめるな?」
真湖が念を押すように問いかけた。
「……うん…。ごめんなさい…。」
どうしてもそうしたかった気持ちは、嘘じゃない…。
だけど、そうすることがどういうことかは理解ってなかった…。
大切にするよ…貴方が大切にしてくれた体だから…
貴方が私を大切に思ってくれているから…。
私は生活時間を元に戻した…。
だけど、付け始めた腕時計は海流さんの時間に合わせた。
これくらいならいいよね?
「こんにちは!」
「おっおはよう、月ちゃん♪」
「あっ、関ちゃん今日もカップラーメン? 体壊すよ。」
「大丈夫、愛がこもってるから…日清の人の♪」
「あははは、何それ意味ないよ。」
関ちゃんの台詞に、私は笑って答えた。
控え室の時計の針が三時をさす…。
ちらりと見ると腕時計は夜の十時をさしていた…。
きっとまだ起きてるよね…。
ねぇ、海流さん…
今何を考えてるの…?
…私は貴方のことを考えてるよ…。
私が眠る時に貴方は起きて、貴方が眠る時に私は動いてて…
昼と夜、吸う空気も、…見える空すら共有できないけど…。
もし貴方が一瞬でも私のことを考えたら、
その一瞬は、貴方と私が共有する時間になる…。
…私の頭から貴方のことが離れることはないから…。
あの時のこと…よく思い出す。
もうずっと…
あんな気持ちなんて、忘れていたのにね…。
だけど今、苦しいほどに…あの時の気持ちが分かる…。
今は、‘つもり’じゃなくて…
馬鹿馬鹿しいって理解ってるけど…。
それでも……………。
今も私の頭から貴方が離れることはないよ…。
――――今、貴方は何をしてる?
『バーカ』って言って笑ってるかな…。
14話〜!!一応20話完結です…(^^;)あと少しお付き合い願えたら幸いです♪ えー14話正直自信ないので、びしばし注意してやってくださいvv
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