Eternal Memories(追憶) -10-
私が願うもの、望むもの…
それはあの時と全然変わってない…。
むしろあの時以上に、願う想いは…望む気持ちは…
強くなった。
だけど、たとえ私があの時と同じように、
全力で駆けても…
涙を流して悲痛な声で叫んでも…、
貴方はもう、止まって抱きしめてはくれないんだね…。
「お荷物事件(?)」から3日後の7月17日…
海流さんが、言った。
「アメリカに行く日を決めた。…7月31日の、午後の便で行く。
空港での見送りは…お前の知り合い悠馬位だから、やめといたほうがいい。
空港行く前に店の奴等に挨拶しにここに来るから、
来れるなら31日の朝はここにおいで。」
そっか…とうとう決まったんだ…。
もう、半月も無いな…。…私、どうなるんだろう…。
――ぶにっ――
そんなことを思っていると、海流さんがいきなり両手でほっぺたをむにゅっと掴んできた。
「きゃ…きゃいりゅはん…にゃに?はにゃして〜〜!(か、海流さん、何?離して〜〜!)」
「ははっ、お月さ〜ん♪」
こ…この男は……人がシリアスに悩んでる時に何するんだっ!
「…月子。」
掴んだまま、いきなり真面目な顔になる。
「にゃ…にゃに?(な、何?)」
…なんだろう…。
ついに言われちゃうのかな…「バイバイ」って…。
「お前に言っておかなきゃならないことがある…」
ずきん。ずきん。甘く聞こえるはずの海流さんの声が…胸を刺す…。
「………。」
「マスカラが、ダマになってる。」
…………は?
「コームでよくとかせって言っただろ?…全く……。」
い、い、い、い、今…な、な、な、な…な…何て…?
「ほら、コーム出せ。」
「きゃ、きゃいりゅはん…」
「ああ、悪い。あまりのつかみ心地にずっと掴んだままだったな♪
しかし相変わらず丸顔だな〜♪」
くすくす笑って、思い切り楽しそうにそう言う…。
こ……こ……この男わっ!!!!
人の気も知らないで…海流さんのバカ〜〜〜〜〜!!!!!
そう思いつつ、コームを取り出す自分が何だか少し物悲しい…。
「目、閉じろ。」
海流さんの形のいい手が私のあごを包み、私は目を閉じる…。
まつげの上を、優しくコームが走っていく。
「…月子。」
「何?」
海流さんが、その手は休めずに話し掛けてきた。
「…これで、別れって訳じゃないし…
向こう行っても、レッスンはちゃんとするから…。」
……え?
「今はメールも電話も手紙も、連絡方法は山ほどあるからな。
……覚悟しとけよ?もっと厳しくなるぞ♪」
あ…あ………。
どうしよう…嬉しいよ。
嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しい、嬉しいっ…嬉しくてたまらないよ…。
また泣きそうになる。
だめだだめだ、こんな至近距離で…ごまかしようも無いじゃないか。
私は今にも流れそうな涙を必死でこらえながら、
「うん、覚悟しとくよ…。ヒギンズ教授。」
そう、言った。
目を閉じたままの真っ暗闇の中で…くすっと笑う、海流さんの声が聞こえた。
その顔を、微笑みを見たかったけれど…
目を開けたら涙が流れそうで…
それに、この優しい手の感触をまだ感じていたくて…
私は目を閉じたままでいた。
「ということで、30日は月曜日で店も休みだし、
朝から海流の送別パーティをするんだけど…月ちゃんも来るよな?」
海流さんと控え室にいると、悠馬さんが何の前触れも無く、
唐突に入ってきて、そう言った…。
「…お前、「ということで」って、いきなり使う言葉じゃないぞ。」
「そんな余計なつっこみはいらねーよ。で、月子ちゃんどう?」
「え?…う〜〜ん………。」
行きたいけど…でも、お店のみんなでやるって言うなら、
千春さんも来るよね…当然。
顔、合わせづらいな…って、毎日合わせてるんだけど…
仕事中と、みんなで盛り上がるパーティとじゃ、勝手が違う。
「…う〜ん、考えとくよ。」
「そっか。…月ちゃんも辛いだろうけど…無理はしちゃだめだよ。」
「うん、ありがとう。」
私がそう答えると、悠馬さんは耳元に近づいてきて、
「……千春のことも…気になるとは思うけど、思い詰めないようにね。」
…そう囁いて、よしよしと私の頭を撫で、
海流さんに一言声をかけてから、店に戻っていった。
………悠馬さん、何か気付いてるのかな……。
何か、悠馬さんって何もかも見透かしてるような気がする…。
悠馬さんだけは何をしてもごまかせなさそうだし…。
………う〜ん…、私の気持ちとかも気付いてるんだろうな…。
「何言ったんだ?悠馬。」
傍にいた海流さんがそう尋ねてきた。
「……内緒。」
「内緒…ねぇ…。」
意地悪そうな笑みを浮かべて、海流さんはこっちを見る。
「……な、内緒っ!」
ほんとにもう…人が悪いよ!顔が綺麗な分、たちも悪い!!
「ところで月子、30の夜は予定あるか?」
「え…ああ、パーティ?」
「いや、パーティは朝だろ?そうじゃなくて夜。」
「…夜?別に特に無いけど…。何で?」
「メシ、食いに行くか。フルコース♪」
「フ、フルコースッ!?」
「そう、ちゃんと正装で行く店にな。行くか?」
何っ?何っ?この展開は何っ???
これって…これって…もしかしてデートのお誘い!!???
30の夜ってことは…日本での最後の夜ご飯、私と…ってことだよね…?
「い、行くっ!!絶対行く!!!」
どきどきどきどき。鼓動が早くなる。嬉しいよ〜〜〜vvvv
「よしっ!じゃ、レッスン決定だな♪」
………………………………………………は?
「テーブルマナー、叩き込んでやる♪光栄だろ?♪」
…………………………………はぃぃ〜〜〜!!!????
ぅぅぅぅぅ…私が甘かった………。
だけど…嬉しいな。
レッスンでも、ロマンの欠片も無くても…
海流さんの日本でのラスト・デート(ってデートじゃないけどさ)は、
私のものなんだ…。
海流さんが付き合ってきたどの女性でもなく、どの知り合いでもなく、……千春さんでもなく、
私……。私だけの特権…。これってすごく幸せだよね。
…ん?ちょっと待てよ…。
でも海流さんがアメリカに行っちゃうからこんなデートがあるんであって…
いや、でも私…海流さんが行ってしまうのはすごく嫌だし…。
そのことについては幸せなんてこれっぽっちも思えないし…。
ぅぅぅぅ……ややこしい…。
だけど、考えても仕方ないことだよね。
今の私には、少しでも海流さんの傍にいることが一番大事なんだし。
「月子、お前フォーマルな服、あるか?」
「え・えっと……う〜んと…。」
「…分かった。こっちで用意しとく。」
そっか、正装なんだった。
海流さんのフォーマル…初めて見れる♪どんな感じだろ〜vv
うんっ楽しみ!真湖に報告しよっと♪
後日、結局私はパーティへの誘いは断った。
悠馬さんはただ一言、
「分かった」と言った…う〜ん、やっぱり何となく見透かされてるって感じ。
夏休みに入り、私は美容院にいる時間が増えた。
あと数えるほどの日々…。
「別れってわけじゃない」って言葉は、
すごくすごく嬉しくて、前よりはずっと安心感も感じてる…。
だけどやっぱり寂しい…。
海流さんと出会ってから今まで、すごく楽しくて、何より心に残ってる思い出…
それが最近よく頭を駆け巡る…。
何だかもう会えないみたいで、そんなことを思っちゃう自分に腹が立って…
………たまらない。
傍にいたいから、傍にいて…
だけど傍にいると、嬉しい反面辛くなって…
やっぱり、考えないようになんて無理だ。
考えても無駄だって頭で分かってるけど、気付けば勝手に考えてる…。
だめだなぁ……私、海流さんは目の前からいなくなるってことも分かってるのに…
どんどん、どんどん…
一日ごとに、一時間ごとに…一秒ごとに……
あの人を好きになってくよ…。
「Eternal Memories」第10話〜♪今回は、見事ですね!笑。
見事にまとまりが皆無(ぉ)です!!!!笑/ぇなぃ。お叱り受けますのでBBSにどうぞ…(><)
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