Eternal Memories(追憶) -3-

 

 

「月ちゃん、何か…変わったね。」

お昼休み、みんなでご飯を食べてたら、友達がそう言った。

「え?どこが?」

「何となく…何か可愛くなったよ。」

「そう?」

「みんなもそう思うよね?」

「うんうん。月子、もしかして化粧してる?」

「うん、ちょっとだけだけどね。…もしかして濃い?」

海流さん直伝の学校用メイクは超ウルトラスーパーナチュラルで、本当に薄い。

でも、所詮朝この顔にメイクする人間は初心者な私なわけで…

上手くできてるか全然自信ない。

「全然!可愛いよ。ていうか、メイクとかじゃなくて何か雰囲気が可愛くなった。」

「恋でもしてるんじゃないの〜??」

「まさか、違うよ。」

「本当に?あやしいな〜♪」

「違うってば。」

苦笑いする私を、友達はからかうように細い目で見ている。

 

私は、海流さんのことも、美容院のことも、

勿論”『マイ・フェア・レディ』ごっこ”のことも、全部誰にも話してない。

海流さん曰く、

「みんなが知ってる中で変わっていっても面白くない」

らしい…。初めに「秘密にしろ」ときつく言われたのである。

 

「…月子ちゃん?…元気ないね。どうかしたの?」

「あ…ううん、ごめん。何でもないよ!」

 

だから…相談もできない…。

 

 

 


 

 

バレンタインから一ヶ月間、ほぼ毎日のように美容院に通っていた私は、

すっかりスタッフさんたちとも仲良くなり、

毎日学校が終わるのが楽しみだった。…一昨日までは…。

 

 

一昨日、いつものように店の裏口から入り、スタッフさんたちに挨拶をして、

控え室で姿勢に気をつけながら海流さんを待っていた時…。

休憩を取りに、千春さんが控え室に入ってきた。

千春さんと二人きりになるのはこの時が初めてで、私はどきどきしていた。

 

千春さんは憧れるほど美人で、初めて会った時から仲良くなりたいなと思ってたから…。

だけどさすが元モデル…何だかオーラが違っていて、なかなか話し掛けられなくて、

一ヵ月間で、話した言葉は数えるほどだった。

他のスタッフさんとはすっかり馴染み、

ジョークまで言い合えるほどになっていた私だけど、

美容院で唯一の女性スタッフで、

一番お友達になりたいと思っていた千春さんとだけはまだ仲良くなれてなかった。

 

今がチャンスかもv よし、いっぱい話して仲良くなろう!

そう思って、どきどきしながら話し掛けようとした。

「あの…千春さん、今日…」

「月子ちゃん」

私が口を開けた瞬間、千春さんのほうが私に話し掛けてきた。

「は、はい!」

千春さんが話し掛けてくれた〜〜!!嬉しい〜!!! ど…どうしよう。

私はもう有頂天。

しかし、千春さんがその後に続けた言葉に、全身が凍りついた。

 

「店長や他のみんな、…海流さんとどれだけ仲良くなっても、

 私には、馴れ馴れしくしないで…。」

…え?

「…ちは……さ……ん……?」

……頭がぐちゃぐちゃになって、言葉が、上手く出てこない…。

「私は、貴女と仲良くなる気はかけらも無いから。」

 

――――――――――。

激しい拒絶…。

私は、何かしたんだろうか…?…何を…?…分からない……

分からない分からない…。

「…あの、…私、何か…千春さんの…気を、悪くさせるようなこと…しまし…たか?」

声が、震える…。

けれど、千春さんはその答えをくれなかった。

私の質問のあと、20秒ほど黙って、何も言わず立ちあがって店に戻っていった。

控え室から出る時、一瞬だけちらりと私の方を見て…。

 

何を…?私は、あそこまで拒絶されるほどの何をした?

分からない…。分からない…。分からない自分に腹が立つ…。

確かに、千春さんとは好かれるほど多くの会話をしたわけじゃない…

だけどそれは逆にいえば、嫌われるほどの多くの会話はしていないってことだ。

じゃぁ…何故………?

 

「背中。」

「うわっ!」

いきなり背後から声がして、背中に何か当たった。

「背中また曲がってるぞ。」

「海流さん!!」

振り向くと、海流さんが膝を私の背骨に当てていた。

裏口が開いたのにも海流さんが入ってきたのにも気付いてなかった私は、

心臓が飛び上がるほどびっくりした。

「何ぼーっと凍ってたんだ?  ………?」

「べっ…別に…なんでも」

海流さんは膝をつき、「何でもないよ」といいかけた私のあごに手を当てて、

私の顔をくいっと自分のほうに向けた。

「…………どうかしたのか?涙目になってるぞ。」

「え!?…あ、目にゴミが入ったの。」

私は、海流さんの手から解放するように顔を振り、急いで目をぬぐった。

「大丈夫か?」

「あ…う、うん。もうとれた。

 …海流さんごめん、ちょっと用事ができたから今日は帰るね。」

「え?おい、月子…」

「ごめん!ちょっと急ぐんだ…本当にごめんなさい。」

「お、おう。」

急いで裏口から外へ出て、自転車にまたがる。

 

初めてだった…憎悪すら感じるほどの他人からの拒絶…それを受けるのは。

だけど…何故…?考えても考えても、心当たりが無い…。

…どうしたらいいんだろう…。

 

 

一昨日以来、店には行ってない。

昨日と今日は、海流さんの研究で、もともと店に行く予定はなかったから。

でも、明日は…。

どうしよう…。恐い…行くのが恐い…千春さんが恐い…、

……激しい拒絶が恐い…。

 


 

 

この二日、悩みつづけて…

相談する相手もなく、やりきれない気持ちになっていた。

携帯から、名前検索で、「三崎 海流」のメモリーを呼び出す。

メール作成のページにしたのはいいけど、でも、こんなこと相談できないし…

携帯を握ったまま、指を動かさずに画面を見つづけていた。

そうして10分かかって打ったメールの内容は

『バカ』

の二文字。たったそれだけ。それだけのメールを送った。

奇しくもこれが海流さんへの初メール。

我ながら自分のしていることがさっぱり分からない。

だけど…

 

ピルルルル…

 

15分後、メール受信。海流さんからだ。

返って来たメールの内容は

『バカ。』

それだけだった。

「ぷっ、あはははは!」

ひねりがないなぁ…でも、まさかそのまま返ってくるとは思わなかった。

あ・そのままじゃないか、”。”があるし♪

これが初メールの内容かよって感じのやりとり…だけどそれは何故か私に安心感を与えた。

 

『ひねりがないな〜☆海流さん研究頑張ってる?』

『あんなメールの返信にひねりなんて、入れる労力が勿体無い。今、休憩中。』

『研究進んでる?』

『微妙なとこだな。』

『そっか、じゃあ明日無理なんじゃない?』

『いや、別に大丈夫だよ。どうかしたか?』

『別に…。 ね、海流さん、彼女いるの?』

『…何?月子俺に彼女いるかどうか気になんの?♪』

『違うよ!もし彼女がいたとしたら、いつデートしてんのかなって…海流さん暇なさそうだから☆』

『へ〜…そりゃ心配してくれてど〜も♪でも今はいないから余計な心配すんな、笑。

じゃ、そろそろ研究室に戻るな。また明日』

『あ…うん、休憩つぶしてごめんね。』

 

メールを送って、携帯を閉じた。

”また明日”か…。

 

ピルルルル…

 

メール受信音が鳴る。…海流さんから。

『背中。』

ぎくっ…。気を抜いてたから曲がってる…!

別に実際に海流さんが見張ってるわけでもないのに急いで姿勢をただす。

何この人…エスパー!?

驚きと同時に少し笑ってしまった。あれ?…下のほうにもう一文…。

『笑顔を忘れるな。』

 

「あははは、もう…メールでまでお小言いわなくて…も…。………あれ?」

目が熱くなる…頬を涙が流れた。本当に…エスパーみたい…。

 

…負の感情を出した顔は、だめなんだったね。

涙を拭いて、口角を上げる。

 

『もう!海流さんにはかなわないや(笑)また明日ね!』

 

 

 

 


 

 

会いたいよ…

どこにいけば、あなたの存在を感じられる?

焦がれて焦がれて…

 

 

いっそ狂ってしまいたい…

あなたを失ったように…私を失うんだ。

 

そしたら、きっと…私は、

私は、あなたの存在を実感できるところへいけるよね。

 

 

だから、私を…狂わせて。

 

 

 


 

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第3話!長い〜…すいませんすいません(T_T)

しかも長い割に見事に進んでないです(爆破)本当に100話言ったらどうすんべ、笑。

 

 

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