Eternal Memories(追憶) -4-

 

 

貴方はいつも優しく微笑みかけた…

だけど私はそれが少し物悲しかった

 

あの時はそれが何故なのか分からなかったけど…

 

貴方は自分を巧みに、見事に隠してたね…

 

どの微笑みが作り物で、

どれが本物か、

 

やっと見抜けるようになったのに…

 

 


 

 

二日ぶりに店に来ると、みんなが温かく迎えてくれた。

「こんにちわ…。」

「よお月ちゃん!久しぶり!」

「久しぶりって、2日会わなかっただけじゃないっすか!」

店長の言葉に関ちゃんがつっこむ。

「でも、分かりますよ。何か毎日月ちゃんがいることに馴染みすぎて、

 二日も顔見ないと久々な気がする♪」

そう智君が笑って言った言葉に、

「だよな〜。よしっ、いっそのこと月ちゃんにここのスタッフになってもらうか!

 …ってことで智、お前と交換な♪お前月ちゃんの変わりに高校行け♪」

と、悠馬さんが笑いながら返した。

「はははは、店長それナイス!

 あ・でも、智じゃちょっと月ちゃんのスカート短いかな?」

「悠馬さん!関さんも二人ともひでーよ。

 しかも俺が月ちゃんの制服なんて着たら変態じゃないっすか!」

店中が笑い声に包まれる。お客さんも、スタッフさん達も、私も…

けれど、その中で一人だけ…千春さんだけは笑っていなかった。

微笑んではいるけれど…あれが合わせてるだけっていうのはいくら鈍い私でも分かる。

あれからずっとずっと考えてた。

けど、千春さんが何故私を嫌うのか、やっぱり分からない…

だから、その理由を突き止めたいと思った。

だって、納得いかないんだもん!千春さんとは仲良くしたいと思ったのに!!

諦めが悪かろうが格好悪かろうが、納得いかないものはいかない!

半分開き直りって感じがしないでもないけど、

不条理なことでひきさがる訳にはいかない。

千春さんと目が合う。

にっこり微笑みかけると横目で睨まれた。

こ……恐い…………。 だけどだけど…ま、負けるもんかぁ!

あ、しまった!語尾を延ばしてしまった。…って心の中の言葉遣いまで気にしなくても。

ってそんなこと考えてる場合じゃないじゃん!私…。

…ぅぅぅ、何か、思考すら間抜け…。こんなんじゃ千春さんの迫力に負けてしまう…。

 

 


 

 

「な、何これ…?」

「宿題。」

程なくして、海流さんが来た。

挨拶もそこそこに、私の顔を見るなり「ぺっ」と一枚の紙を出す。

紙に素晴らしく達筆で書かれている内容は、

 

『朝:学校まで歩いて行くこと。その際手は後ろに振り、背を伸ばす。

   カバンは、片肩だけに負担のかからないリュックが望ましい。

夜:腹筋30回、背筋30回。風呂は少し長めに入る。』

 

「……宿題…って…。」

「毎日な♪」

「毎日ぃ〜〜〜!?」

「当たり前だろ。ほらほら、表情。」

「「表情。」じゃな〜い!…学校まで歩いていったら最低一時間はかかるよ?」

「早起きすればいいだろ。早起きは頭の回転も速くなるし、健康にもいいしな♪」

「こ、ここに来る時は?自転車じゃなきゃ来れないよ?」

「家に歩いて帰ってから、自転車で来ればいい。」

「時間かかるよ?」

「じゃ、学校から家まで走って帰れ♪」

海流さんは、素晴らしい笑顔でそう言った。

「…………。」

「表情。」

ぶにっと頬をつままれる。ぅぅぅぅ…。

「…ひぇをうひろにっひゅるってなに(←手を後ろに振るって何)?」

「ああ、歩く時って普通手を前に振るだろ?

でも後ろに振ったら肩が引っ張られるようになって綺麗な姿勢で歩けるんだ♪」

「ひぇ〜、…もうはにゃひて〜。(←へー、…もうはなして〜。)」

「ああ、ごめんごめん。あまりにぶにぶにだったもんで♪

 月子なだけにお月さんだな」

くすくす笑ってそういう。むっ…悪かったね〜、丸顔で!

「ふくれると満月だぞ♪」

き〜〜〜!

私の反応をものすごく楽しんでいる…多分私は海流さんの想像通りの反応してるんだろう。

くやし〜い…。かなわない…。そのうち見てろよぉっ!

「ほら、他の説明するぞ。

 まず、歩いて…はいいな。カバンは、片肩に負担をかけないリュックにしろ。

 片方の肩だけに負担をかけると、

 負担がかかってる方の肩がさがって体のバランスが悪くなる。

 夜のエクササイズと風呂は、新陳代謝のためだな。お前、ちょっと肌荒れてるから。」

海流さんのこういうところ、すごく好きだって思う。

何故それをするのか、その理由をちゃんと納得できるように説明してくれるから。

「…ま、丸顔はどうやっても直せないけどな♪」

…これで余計な一言さえなかったら最高なのに。

 

「さて…と。」

海流さんが立ち上がる。

「どうしたの?」

微笑みながら、海流さんが答える。

「月子、ちょっと散歩しに行こうか。」

な…なんでいきなり、散歩?

 

 


 

 

店から5分ほど歩いて、来た先は芝生がまぶしい緑地公園。

たわいない話をしながら、ゆっくりと散歩して、ベンチに腰掛けた。

「気持ちいいね、緑の中って…。」

「だな。日の出てる日に植物の多いところにいくと光合成によって作られた酸素が…」

「あはは、出た!こんなとこでそんな話はいいよ。」

「…そうだな。」

くすっと笑って、海流さんは口を閉じる。

 

心地いい沈黙…。さわさわと木々の葉が風になびく音がする。

 

「…ねえ、海流さん…」

「何だ?」

「うまくいかない人とかって…いる?」

「ん?いないよ。俺は世渡り上手いからね♪」

笑いながら言う。

「…だろうね。」

多分海流さんはどこいっても人気者だろう。きっと頼りにもされてると思う。

「お前はいるのか?」

「……別に、そういうわけじゃないよ。」

「……。」

 

少しの沈黙。でも、さっきとは違って少し、空気が重かった。

 

「…な、月子。あの木の葉、何色に見える?」

海流さんが指差したのは10mほど先にある大きな木。

「緑。」

「よし、じゃちょっとおいで♪」

海流さんが立ち上がって、その木に向かって歩く。私は、その背中を追っていった。

 

木の下まで行き、木陰にはいると、海流さんは上を指差した。

「見てみな。…何色に見える?」

下から見た葉っぱは、日の光に透けて、薄く光を放っていた。

透けた葉の色と、葉と葉の間から見える空の青色が、すごく綺麗で…私は目を奪われた。

その葉の色は…

「…黄緑…。」

私の言葉を聞いて、海流さんはニッコリ笑い、

「綺麗だろ。俺は、この角度から木を見るのが一番好きなんだ。」

幹に触りながら、そのまま言葉を続けた。

「でも、側面から見ただけじゃこの魅力は発見できない。葉の色も緑にしか見えない。

 …人も、同じじゃないか?

 同じ角度からしか見ないんじゃ、その人のどんな魅力にも気付かない。」

あ…。

「“とらわれる”なよ、一つの角度に。広い視野を持って物事を“とらえる”んだ。」

「でも……私がそうしても、その人が見てくれなきゃだめなの…。

 …私が、その人に嫌われてるの。

 …でもね、私…その人に嫌われてる理由が分からないんだ。」

「…そいつは、どうしても嫌われたくない奴なのか?」

「…うん…。」

「なら、その人に下から見た木を見せればいい。色々な角度からのお前を見せてやれよ。

 …それはすごく難しいことだけどな。」

海流さんは優しく微笑みながら、言葉を紡いでいく。

こぼれそうな涙をこらえる…。でも、海流さんの次の台詞を聞いてこらえきれなくなった。

「頑張れ。俺は、どんな時もお前の味方をしてやるから…。可愛い生徒だしな。

 …もっとも、できがいいとは言いがたいけど♪」

涙が溢れ出す。だけど、最後にやっぱり余計な一言を言う海流さんが少し可笑しくて

泣きながら笑ってしまった。

「こ〜ら、表情。」

その一言で、私はもっと笑ってしまう。

 

分かった…。いきなりの散歩は…多分、メールで様子がおかしかった私を元気付けるため…。

私が悩んでること、気付いてくれてたんだね…。

 

涙を拭いて、もう一度葉を見上げる。海流さんも、上を見る…。

綺麗な綺麗な、光景…。

ふと、横を見て、

私は下から見た木の美しさよりも、綺麗な葉の黄緑よりも

それを見上げる海流さんの優しい微笑みに、目を奪われた…。

海流さんの微笑みは、いつも見ているはずなのに、

 

何故か…その微笑みに、どきっとした。

 

 


 

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第4話です!今回は内面についての授業(?笑)ですv 

下から見た木って本当にすごく綺麗なんですよ☆でも上手く書けない…苦笑。えへ、感想くださいv

 

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