Eternal Memories(追憶) -8-

 

 

どれくらい、あなたの存在に感謝しただろう。

言っても言っても足りないくらい…

 

あなたがいなければ、私は…

きっとぼろくずのようにぼろぼろの心を抱えたモノになっていた。

 

みじめで、不安定で、

 

強さの意味も知らない…モノに…

 

―――ありがとう――――。

 

 


 

 

『あ〜…ほんま辛いわ。』

休みの日、朝っぱらからいきなり電話をかけてきたのは、

朝っぱらになって帰宅してるらしい真湖。

『な〜、聞いてる?』

「聞いてるよ。」

どうやら現在付き合っている一つ下の彼氏との遠距離恋愛(片道2時間近く)

が辛いとのことらしい。

『ほんま、うち基本的に寂しがり屋やから会われへんのきついねんって。』

「うん、そうだろね。」

『遠距離って辛いよなぁ…自信なくしそう…。』

その言葉にふっと海流さんの顔がよぎる…。

 

――『アメリカに留学することになった。』――

 

ずきん。ずきん。痛みを増すこころ。

「うん、遠距離なんて…嫌だよね…。」

『やろ〜、分かってくれる?』

 

――『アメリカに留学することになった。』――

 

海流さんの台詞に、リピートがかかる。

「うん。だって、私も、あの人がいなくなるのに…絶えられる自信なんてない…。」

『……え?』

・……あ。

『…ぇえ?』

……………………しまった!!!!!!!!

 

『えぇえぇえぇえええええぇぇぇぇぇえ!!!!??????』

 

 


 

 

「…で?」

ふ〜〜〜っ、っと慣れた手つきで煙草に火をつけ(未成年なのに…)

いきなり本題に入ろうとする茶髪さらさらストレートロングの関西弁の少女…真湖は、

あの「失言」のあと、ごまかすことも、かわすこともさせてくれず、

『出てこないなら朝っぱらからあんたの家でピンポン鳴らしまくる!』

という半脅迫のような言葉で、近くの図書館の下のエントランスロビーに私を強制的に呼び出した。

「「…で?」って言われても…。あっ、そういえばさ、アルバイトは…」

「順調。…で?」

紛らすための質問を最後まで言い切らせてくれすらしない…。

ぅぅぅぅぅぅ…なんでこんなことに〜……。…ぅぅ…私のバカ。

海流さんにばれたら……ぅゎぁぁぁ…。

「…月子。…あんた早よ話し。」

ぅぅぅ…。

「……はぃ…。」

私は、観念した。

所詮鈍い私にこの付き合いの長い友人をごまかしきれるわけはないのだ。

 

 

……2時間後…。

 

「……。」

真湖が、無言になる…。

多分、話が想像してたより複雑で、分かりづらいものだったからだろう。

「…で、「あの人がいなくなるのに」ってのは何なん?」

「あ…それは…。…海流さんアメリカ留学決まったんだって…。」

自分の口で言うと、辛さが増す…。

「アメリカ!?…遠いとか言うレベルちゃうやん…。」

「うん…。」

ずきん。ずきん。また、痛み出すこころ。

「辛いな、あんた…。」

真湖が、私の頭をぽんぽんと撫でる。

 

それは、海流さんがいつも私にすること…。

つい、重ね合わせてしまう…。

辛くて辛くて、こころが痛くて痛くて…。

「真湖…。」

また泣いてしまった。

私の涙腺は、海流さんの『内面についてのレッスン』の時に、壊れてしまったらしい…。

 

だけど、私の側(がわ)から見てくれる人が隣にいる。

私の気持ちを、優先して分かってくれる人が隣にいてくれる。

 

千春さんは海流さんに、

関ちゃんは私より付き合いの長い海流さんに、

当然ながら、悠馬さんは完璧に海流さんに…

智君は海流さんに対して憧れと、そして目標を持っていたから…。

私と海流さんのことを知ってて、私の視点から見てくれる人は今までいなかった。

私の感情を優先させてくれる人は、一人もいなかった。

 

 

――『辛いな、あんた』――

その一言が、

そんな、たった一言が………。

私には、救いだった。

 

 

 

「…で、どうすんの?」

私が泣き止むまでずっと側で肩を抱いてくれていた真湖は、そう聞いた。

「うん?変わらないよ。」

「変わらんって…」

「いつもどおり。毎日、いける日は店に通って、海流さんに色んなこと教わって…

 …千春さんの睨みにおびえて…」

くすっと笑ってそう言った。

「海流さんがアメリカに行くって言うのは、8月になってからの話。

 行ってしまった後、どうなるのかは私にもわからない。

 だけど、それまでは…」

「…それまでは?」

真湖が聞く。私は、苦笑いして、微笑みながら…

「側にいたいんだ…。」

と言った。

海流さんの、真似みたいに…‘苦笑いして、微笑みながら…’

 

 

「これからのことは、全部うちに言うねんで!

 黙ってたら……襲うから♪」

ぞわっ。。。。…とっ、鳥肌がっ……。

「恐いこと言うな〜〜〜〜〜〜!」

「あはははは。」

 

 

 

何にせよ、真湖との会話で、「絶望」はその色を少し明るくして、響きを失ってくれたようだ。

 

自分サイドの人間がいるということの強み…安心感…やすらぎ…。

 

それが、私を救ってくれた。自分の失言を褒めてあげなきゃあ…

 

 

…な〜んて、

言ってる場合じゃないよねぇ…?

ひ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!待ち合わせまであと10分!!!!!!

間に合わない〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

 

じゃかじゃかじゃかじゃかじゃか。ひたすら自転車を走らせる。

ひとくせふたくせなんてもんじゃない、

みくせもよくせもある人間達が集う、

お洒落なお洒落な、美容院に向かって。

優しい微笑みを持つ、綺麗なヒギンズ教授が待つ、

光溢れる店に向かって…。

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの日、「一人ばれた」という話を律儀に報告したら、

何故か真湖のことは店中の話題となり、

真湖に一つのあだ名がついた。

 

 

『‘噂の’真湖ちゃん♪』

 

 

 

 


 

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第8話で〜す♪やっと更新できましたvvv

えと…こっから噂の真湖ちゃん結構出てきますので、よろしく〜☆感想をくれたら幸せ♪

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