Staunch Friends(約束) -3-
お前ってつくづく思うけど…不器用だよな、感情面で…さ。
お前のその優しさが、相手を思いやる気持ちが…
裏目に出ることもあるって…知ってたか?
守りたいが故に自分を傷つけて…
それが逆に何より守りたいものを傷つけるってことも、あるんだ。
お前は、何でも鮮やかにこなし過ぎるから…。
高校時代、季節はあっという間に移り変わり、
仲間と騒ぐ楽しい時間は瞬く間に過ぎていく。
高2の秋…ある昼休みのことだった。
「最近、あいつ変わったよな…。」
「は?何だいきなり…。」
海流を見ていた達也がいきなりそんなことを呟いて俺を驚かせた。
「いや…海流ってなんか今までは完璧って感じで近づきがたい感じだったけど、
最近はずっと身近になった気がする。」
「ああ…かもな。」
海流は昔に比べて目に見えて親しみ易くなった。
「…お前とつるんでるから?」
「ははは、まさか!」
確かに、あいつはかなり俺に対して気を許してる。
作り笑顔も俺の前ではしなくなってきた…つーか、俺がさせないだけだが…。
だが…それだけじゃない……気がする。
いや、きっとそれだけじゃない。
彼女と別れた理由の一端もそこにあると思うのは…俺の勘ぐりすぎか?
その日の放課後の美術室、
いつものように海流は本を読み、俺は絵を描くという数時間。
ふと読書の手を止め、外を見た海流が話し掛けてきた。
「なぁ、悠馬。今描いてるのの次に描く絵って決まってるか?」
「ん?いや、決まってないけど。」
「じゃあ、次は空描けよ。」
「………またか?」
海流のリクエストはいつも空だった。
青空に始まり、星空、雲、太陽…何枚描いた事だろう。
「今度は、夕方の空。ほら、外見ろよ…芸術的だぞ?
今みたいに青い空に、夕日を浴びて赤紫に染まった雲が重なってるやつがいい。」
視線を窓の外にやり空を見ると、そこには感動するほど綺麗な夕空があった。
…こいつはまた難しい注文を…。
「…お前、ほんっと空好きだな。」
「綺麗だろ?」
「そりゃ…まぁな。…一番好きなのは夕空か?」
「いや、一番は抜けるような青空だな。
吸い込まれそうな深い青に…真っ白の雲が浮かんでたりしたら最高♪」
なるほどね…こいつには似合うな。
「理由でもあるのか?」
「…さぁね♪それよりお前は?悠馬。」
「俺? 俺は………星空かな。」
「ははっ、出たロマンチスト!気障野郎〜♪」
むかっ…。
「てめー…人のこと言えんのか?」
「俺はリアリストだから♪」
「リアリストで、ロマンチストだろ?」
「ははっ、何だそりゃ。」
なんだかんだでかわされちまった…本当に、食えない奴…。
そして冬…海流に彼女ができた。
お相手は一つ下の学年の、可愛いと有名な女の子だった。
海流はその子のことをほとんど知らなかった。当然好意も抱いていない。
だが、“その気も無いのに結局断りきれなかった海流は悪い”とはどうしても言えない。
告白を受けた時海流が断ると、その子は泣きに泣いてどうしてもと食い下がり、
Yesを言うまで泣きながら嘆願しつづけた…とは、一部しか知らない事実だが…
それほど想いが深いということだろうか。
まぁそこまでされて断ったら逆にその子が可哀想というか、
その子にあまりよくないレッテルが貼られるのた確かだろう…。
まったく、あいつは気を遣いすぎる…甘すぎる…。
好きな女がいるくせに…。
そうだろ?海流…。
「中山、髪伸びたなー。」
「え…うん、何か切る暇がなくて…。
べ、別に三崎君に言われたからじゃないからね!」
「ははっ、分かってるよ。…うん、でもやっぱその方がいいよお前♪
今度は長さ変えずにちょっとすいてみたら?」
お前が親しみ易くなった理由は…恋をしてスキが出てきたから…。
…そうだろ?…海流…。
俺はこの海流と年下の女との付き合いを何が何でも止めればよかったと、
後になって後悔することとなる。
三年になった。
クラス替えで、二年のクラスからは6人が同じクラスとなった。
その6人の中に俺と海流、そして中山もいた。
「担任は…内山か。しかしけっこうバラけたな。」
「ああ。…ま、こんなもんだろ。」
「三崎くん、羽賀くん!」
「おう、中山。部活ともどもまた一年間よろしくな!」
「また一緒だな。三年一緒なんて腐れ縁ってやつか?」
「本当、二人とは縁があるみたいだね。みんなに羨ましがられるかな?」
くすくす笑う中山は、誰の目にも可愛くなった。
もてているらしいという噂も流れている…まぁ、理由ははっきりしてるが…。
さて、海流……そろそろきっぱりと別れちまえよ。
中山が何で何期もわたって図書委員なんてやってると思う?
何で活動自由の美術部に頻繁に顔を出すと思う?
何で髪を伸ばし、すいたと思う?……本当は気付いてるんだろ?
お前が鈍いなんて…俺はかけらも思っちゃいねぇからな。
海流は年下の女とまだ続いていた。
…というより、相手が海流を離そうとしなかった。
それを突っぱねない海流はやっぱり甘い。
だが俺には何も言うことはできない。これは当事者が動かなきゃ変わらない。
それに…最近俺自身余裕が無かった。
2月に、お袋が倒れた。
もともと心臓を患っていたお袋は、激しい発作を起こし、入院を余儀なくされた。
これは…誰にも言ってないし言うつもりも無い…。
気を遣わせるのはいただけないし、言ってどうなるってもんでもないから…。
気付かせないように、普段通り振舞う。
それが少しきつくて、俺には余裕が無かった。
唯一の安らぎは、美術室での心地いい数時間だった。
放課後、いつものように美術室へ…。
その日は何故か任命されたアルバム委員とやらの第一回委員会があったので、
1時間ほど行くのが遅れた。
げ、あと2時間くらいしか時間が無い…今日中に仕上げようと思ってたのに…。
そう思って、美術室へ急ぐ。
「…よな?」
「うん、そうそう!」
近くまで来ると美術室から声が聞こえた。
…海流と、中山の声だった。
…はーん…これは、入らないほうがいいか♪
紳士にあるまじき行動だが、俺はドア側で成り行きを見守ることにした。
「あっ、そういえばこの間また難しそうな本借りてたよね?」
この間…『精神と物質』か?それとも『投資戦略の発想法』か?
「ああ…これだろ?」
「そうそう!その本面白い?まさかその歳で株とかやってたり…。」
ああ、『投資戦略の発想法』の方か…。
「んー、まあまあ面白い。株は…お遊び程度にはやってるけど…。」
どこがお遊びだ!何十万単位で勝ってるくせに!!
「すごいよね、何か…違う次元かも…。」
「ははっ何が。中山も、本読むだろ?」
「私?私は…恋愛小説くらいしか読まないなぁ…。」
「へぇ…恋愛小説ね…。」
「うん、なんか手にとっちゃう。…実際じゃありえない話も多いんだけど。」
「…じゃあ、中山の実際の恋は?」
おっとぉ…。
「えっ…。そ、そんなのしてないよ!み、三崎くんと違ってもてないもん。」
「何で?…お前可愛いじゃん。」
「え…や、やだなぁ…三崎くん口…うますぎ…。」
「そうか?」
「そ、そうだよ…。」
沈黙が流れる。だが、そこに心地悪さはなさそうだった。
いい雰囲気だな…これはデバガメなんかするより退散した方がいいかも。
そう思って体の向きを変えたその瞬間だった。
―――ガタッ―――
何かが倒れる音がした。
「中山!」
海流の声と共に、部屋から走って出てきたのは、中山だった。
「…うわっ!」
「……っ!」
中山は振り返った俺にぶつかったがその勢いを止めることなく走り去っていった。
その目からは、涙が溢れていた。
俺は体勢を立て直し、海流のいる美術室へ入る。
「…海流。」
「ゆう…ま。」
らしくなく、余裕なさげな海流の表情を見て、聞いた。
「…何があった?泣いてたぞ、あいつ…」
「………。」
「何もないなんて、言うなよ?」
「…お前にそんなごまかしがきくとは思ってないよ。」
「当然。…で、何があった?」
「…………あいつに、キスした…。」
…は?
「…限界だったんだ…。」
「……で?どうするんだ?」
「…美香と別れる。…もう、この気持ちは偽れないからな…。」
真剣な表情に、少しだけ辛さが見え隠れする。
「…ばーか、遅えんだよ。お前は…。自分ばっかり痛めつけやがって…。
……自己中は自己中らしくもっと自分のことも考えろ。」
俺がそう言うと海流は苦笑いして、微笑んだ。
その後に続くのは、幸せな恋の始まりだと…疑いもしなかった。
自分の余裕の無さが、持ち前の洞察力すら鈍らしてるなんて思いもしなかった。
次の日、予想しない展開に…俺は過去を心底後悔した。
…自分のことを省みないっていうのは、バカだと思う。
だけどその一方で、尊敬もするよ。
この時のお前の自己犠牲なんて今思えばほんの小さなことだけど…。
それでも痛みに変わりは無い。
…お前は心配をかけすぎる。
まぁ、それはお互い様か。
第3話ー。株のできる(しかもそれで稼げる)高校生…大丈夫、これはいます!爆。
ぁぁぁ、キリが悪い…。お叱りはBBSまでどうぞー(TT)泣。
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